タイ・カンボジャ記1

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3時、4時、5時に目覚め、最後は6時に起き出す。
一番最初にTシャツを着て、最後に羽毛のジャンバー、
バンコクに着いたら、順次、脱いでいって最後はTシャツになる工夫だ。

寝ぼけ眼で慎重に諸電源を落とす。
以前、
私が出掛けた後で電話が掛けられない事態が生じた事があった。
事は重大なのだ、慎重を要する。

今回の最終旅先はカンボジャのシアヌークビル。
シアヌーク殿下さんの別荘の有ったところ、が命名の由来とか。
其処へこの8年来通っているSが、
「いいとこだ、是非来い」
と何度か誘ってきている。
日本に居なければならない理由は何も無いが、
行く目的も何も無い。
彼の言う「いいところだ」に、ふいとその気になった。

滞在期間は、体力と航空運賃を勘案して、
エアーインデア45日チケットに決める。
まず、バンコクまで行って、2,3日娘のところに逗留して、
それからプノンペン、シアヌークビル、
シアヌークビルに一ヶ月滞在して、同じルートで戻る、
そんな計画だ。

成田、二時間前に着いたのにエアーインドのカウンターは長い列が出来ている。
アイルサイドは空いていない、
閉所症候群気味の私は必ずアイルサイドをとる。



通路側隣はもの優しそうなインドの紳士で助かった。
私は飛行機の中で何回も席を立って気分転換するのが習性なのだ。
反対隣は日本のお嬢さん。
このお嬢さん、赤ワインにオレンジジュースを注ぎ込んだ。
「結構、マイルドなんですよ」
だそうだ。

立原正秋原の「花のいのち」を読む。
鎌倉、沼津、奈良が舞台。
舞台もいいが、登場人物が素晴らし過ぎる。

新しいバンコク空港は馬鹿でかい。



ミグレーションまでが長い、
荷物の受け取りなどは判り易くなった。

英語に弱いしタクシーの運ちゃんとの交渉が嫌な私は専ら空港バスを使う。
宿も空港バスで判り易いところに取ってある。
バスに乗ると、係りの男がチェック、
「何処で降りるの?」
「スクンビット」
「このバスはスクンビットへは行かない」
と言ってる様だ。
それがやっと判ってバスを降りてチケット売り場に行く。
この間の時間がスローモーションのように過ぎる。
機内でのアルコールが未だ残っているようだ。
さっき、
チケットを渡してくれた女の子がニヤニヤしながら違うチケットに変えて呉れた。
私の「スクンビット」を聞き違えたらしい。
益々、英語の自信が無くなった。
不思議なもので、何かの時に出てくる外国語は中国語、
たいした中国語では無いのに身に着いてしまっている有難う、
スイマセン、こんにちは、の類は中国語だ。

と、隣席の女性が袖を引く。
彼女が指差した向こうをバスと平行に飛行機が飛び立ってゆく。





次にカメラを構えた時は飛行機は空の彼方だ。
その向こうに夕日が沈む。

彼女が又袖を引く。
彼女の指差す辺りに車が一杯止まっている。
飛行機見物に来ているのだ。

スクンビット通りに出たようだ、もう直ぐらしい。
隣の女性に尋ねたら、
「あと45分」
うんざりしている内にも時は刻む。
降りた角の喫茶店で娘が手を上げる。

ホテルにチェックイン。
暫く休んで近くの見覚えのある居酒屋。
冷奴、最低に不味い。
ふっと、南禅寺まえの湯豆腐を想い出す。
キスの天麩羅で生2杯。

続く





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