メコンに沿って(24)

世界中で一番観光客が少ない世界遺産 ワット・プー

ホテルへ直行、直ちに、
隣のレストランでビール、甘酢煮の魚が飛び切り美味い。
店の前をバイクの若者が左右の行き交う、女性のバイカーが多い。

いきなり凄まじいスコール、
空気の汚れや生温みを鎮め、冷やし、洗い流して、地に戻す。
これが何時も澄んだ空気の源なのだろう。

何軒か探してコダックの看板、やっと電池を見付けた、
4本36000キップ、絶対にまけない。
家に電話、1分14500キップ。

何としてもワットプーが心残りだ。
ホテルの男が「車をチャーターすれば簡単だよ」と言う。
片道3時間で45$、35$で交渉成立。
昨日、戻って来た道をまた戻る。



運チャンの名前はカンバン君、車はトヨタハイエース、8人乗りに私一人の客だ。
カンバン君は英語が少し出来る。
「この道はバクセーからカンボジャまで続いています。
日本、中国、韓国の三国の共同出資です。」
三国が地域を分けて分担しているらしい。



中型乗用車が4台乗れるフェリーでメコンを渡ると、チャンバサック、
カンバン君は
「此処がチャンバサックシチー」
と言った。
メコン沿いの一本の道の両側にギッシリ民家が詰まる、
と言っても、建平率の低い敷地だから、建物より緑の木々の方が多い。



往時を偲ばせる石造りの神殿跡、見事に朽ち果て尽くされている。
今迄見て来た遺跡の殆どは、
手間暇かけて修復されたものが多いが、ここは殆ど手が付けられていない。
観光客も疎らだ。

5、6世紀に栄華を誇ったクメール人が建造した
絢爛豪華を極めたであろう古代ヒンズー神殿も、
崩壊の美、とでも言おうか、
自然のままに崩れ去り自然に調和が取れるまでに至っている。

 





自然の雄大さと共に文明の卑小さえも感じぜずにはいられない。
長い参道から山の中腹に至る石段も所々が、大樹で遮られ、
長い間の風雨で左右に流れかけている大石もある。
フット気が付くと、今踏んでる足元の石段には、見事な彫刻の刻まれている。







崩れるままの大きな神殿のある頂上から振り返ると、
辺りの水田を潤したであろう広大な貯水池の後が広がる。
今でも使われているらしい辺りは水面が逆行に光り輝く。



幾人かの子供達が、赤、紫、白などの飾り物を手にして売りつける。

丁度、前後した学生風のグループが、
その飾り物を石仏に飾り、一心に祈りを捧げている。
飾り物と思ったのは線香だった。



7、8歳の女の子と4、5歳の男の子が登り口からずっと付いて来た。
一休みする毎に彼等が線香を差し出す。
始めは鬱陶しかったが、変に押し付けがましくも無く、
ただ、黙々と付いて来る様子にほだされる。
彼等に1000キップずつ渡して、線香を上げ、引き返そうとすると、
「こっちにも有るよ」
と、先に歩き出す。



 

薮を掻き分けて付いてゆくと、大きな岩穴に顔も定かでないほどの仏像、
更に付いていくと、
得体の知れない大きな石の建造物、
年長の女の子が一生懸命説明してくれるが判らない。
奈良の酒舟石に似ている。
更に行くと、岩其の物が等身大の像の彫刻、見事としか言いようが無い。



一回りして頂上の神殿に戻り、彼等に礼を言って石段を降りかかると、
彼等が袖を引っ張る。
さっきは気が付かない神殿の壁面に、女神の像だ。



 

 

豊かな胸を更に誇張している。
ここも、ここもと幾つかの壁面を案内してくれた。
良いガイドに巡り会った。
二人の名はポンとプー、案内料として1000キップずつ上げると、
この世では有り得ないような笑顔が返る。

つづく