メコンに沿って(25)

ラオスの学生達と一夜を共にする

入口の茶屋でビールを飲んでいると、
さっき、石段の途中で前後した学生風のグループの一人の青年が話し掛けて来た。
日本語が出来る。
彼はバクセーに住んでいて、彼の弟がビエンチャンの大学に居る、
今日は弟の学友達を案内をしているのだそうだ。

夕方の帰り道、牛、豚、鶏、軍鶏、猫、犬、
そして人間がぞろぞろと道に出て来ている、
その度に車はスピードを落とす。
全く楽しい。


チェンバサックの街を通り抜けようとした時、
大きな白人の青年二人の間に東洋人の女の子、
少し通り過ぎてから振り返ると、ヴィエンチャンで一緒したYちゃんだ。
「わァー、Kさん! また、豪華な、この車、一人で借り切ったの?
私なんか、10$の部屋を三人でシェヤーしようとしてんのよ。
あれから,何処へ、相棒さんは、これから、、」
相変わらず、一人で喋っている。
「e−mail出すわね!」
「俺も出すよ」
我々と大体同じルートで動いているらしい。


フェリーの上で、また、ラオスの学生達と一緒になる。
「今夜、バクセーでビヤーパーテーをやろう」
と言う事になった。

彼の名前はチョン、映画俳優にでもしたいような端正な顔、
背もすらりとした筋肉質の体が締まっている。

そのチョンが車で迎えに来た。
ラオス風のレストランでは、既に、5人がキチンと坐って待っていた。
ミスラオスにでも成りそうな美人が、3人も。
三人の女の子は、ター、クー、ボクと言う名前、
あとはチョンの弟が二人、下の弟はまだ少年だ。

彼等の趣味を聞いてみた。
ターはTV、クーはSleep & eat、ボクはポピュラーミュージック、チョンの弟はTV、
日本の学生達とは一寸違うようだ。
皆、ビエンチャンの学生、建築が専攻とか、女性達は酒に手をつけない。
強引に飲ませると、一つのコップで廻しのみを始めた。
ラオス風の飲みかたらしい、それぞれが乾杯して隣へ廻す。

場を仕切るのがボク、彼女がそれぞれの顔を見ながら酒の量を決めている。 
ほんの僅かな量だ。 料理が面白い。
日本のしゃぶしゃぶに似ているが、違うのは、
丸い鍋の周囲で野菜類を煮て、盛り上がった中央で焼き肉だ。
幾種類かの辛しの効いた調味料を付けて食べる。
肉に弱い私だが、これが又何とも言えない美味しさだ。











支払いをしようとしたら頑として押し切られた。
「それじゃー、もう、一軒行こう」
と、案内されたのは、いかにもバー風の店、踊ってる客も多い。

学生さん達は物珍しそうにキョロキョロしている。
彼等も何曲か踊っていたが、余り踊り慣れては居ないようだ。 冗談に、
「毎日、勉強ばかりしているのか?」
と尋ねると、彼等は冗談には受取らず、肯いた。
隣に坐ったチョンは結構お酒がいける。
強い酒をぐいぐいと気持ち良く空ける。

酒の勢いからか、前の席のボクを指差して突然言い出した。
「私は彼女が好きなのだが、彼女は私を好きではないのです。」
「本当なの?」
「いや、冗談です」
「彼女に、その冗談を話してみようか?」
「ハイ、構いません」
気配を察して、彼女が、
「何、話してるの?」
と問い掛ける。
彼が、こういう事を言ってるよ、と彼女に告げると、
「彼には一人の彼女が居ます」
此処にも、男女の葛藤が有りそうだ。



2軒目を支払うのに10$渡した、
お釣が無いところを見ると不足した様子、何回かチョンを突つくと、
「12$でした」
あと2$をどうしても受取らない、下の弟に上げる事でケリが附いた。
ホテルまで送ってくれた彼等が、車を下りて、一人一人握手してくれた。
「GOOD LUCK!!」
「YOU TOO!!」
たった一時の付き合いなのに別れは嫌なものだ。
闇の中に車が消えて行った。

つづく