メコンに沿って(13)


行方不明の王様の王宮

タイでもそうだったが、ラオスでも昼下がりは人通りが絶える、皆、昼寝の時間だ。
こんな時間に歩いているのは観光客だけだ。
頭の天辺からギラギラする日差しを受け、王宮博物館へ。

 

かって、ラオス仏教の中心地として栄えた王国の都、
こじんまりとはしているが、
やはり王宮だけあって格調が高い。
内部の装飾は黄金に輝き、壁のモザイク模様は見事だ。
古い仏像が威厳をただす。
600年に渡り栄えた王国の最後は哀れだ、
1975年の革命で 、王と王妃は何処にか連れ去られ行方が判らない。
王宮の裏側には、一部始終を見て来たであらうメコンがとうとうと流れる。
王宮のテラスからメコンを眺め感慨に耽っている白人女性、
傍を通り過ぎても、身動き一つしない。






二人目に有った日本人はお喋りな女の子

メイン通りには、白人の好みそうな土産物屋、レストランが店を連ねる。









珍しく、日本人が声を掛けて来た、20歳前後の女性だ。
「日本人です、 か?」
と、私を覗き込む仕種、白い歯がキラキラ光る。
「私、オーストラリアの人とシェアーしてます」
一方的に話す。
何かトラぶったらしい
「詳しい友人と一緒だから、
もし良かったら?僕のホテルはあそこ」
と指差すと、
「じゃーもしかしたら」
と別れて行く、久しぶりで日本語が話せた事で満足の様子でもある。

夕方、相棒が引っ越して来た。
ベランダが気持ち良い。

「あれじゃないか?」
相棒が顎をしゃくる。
ベランダの真下になるホテルの入口で、さっきの彼女が中を覗っている。
「7時にみんなで夕食しよう」
と決まる。
彼女が昼間見たというメコン沿いの”素敵”なレストランへ。

彼女は上海大学に留学中、もう二年目に入る、
一ヶ月前に上海を出て雲南からラオスに入って来た。
驚く事を言い出した。
彼女がシェアーしているというオーストラリア人の友達は
金髪のお嬢さんと半ば期待していた我々は、
「お友達はどうしたの?」
「彼は何処かへ出掛けました」
相棒と顔を見合わせる、流石の相棒も口が開いたままだ。
暫く声も出ない。
相棒も私も、二人の娘を持っている。
相棒が穏やかに言う、
「彼って、、、恐くないの?」
「何も変な事はしません。 そういう人種は顔を見れば判ります。
親切じみて寄って来るには危ないんです。
人が好いと好色とは違います。」
何を言ってるのか良く理解出来ない。
「お家の方はご存知?」
「家には旅に出てる事も、そんな事も知らせません。
余計な心配するだけですから」

キチンと足を揃え、食事のマナーも我々と違って正式、
どう見ても、普通のお嬢さんだ。
暫く親子の話題になる。
彼女のお父さんは、我々よりも一世代後の現役らしい。

門限ぎりぎりに彼女を送り届ける。
後で飲んだ不味いコーヒーのせいか、
彼女のショッキングな言動のせいか、仲々寝付かれない。
ロビーに下りてビール。


釣りそこねたメコンの魚は大物

早朝、ガタガタと相棒が釣りから戻って来た。
「メコンの魚は大きい、針をみんな取られてしまったよ」
満足そうに微笑む。
  隣のレストランで朝食を済ませ、ビエンチャンへのエアーチケットを手配しに出掛ける。
バクセーへ急ぎたい彼だったが、今日の便は取れない。 
二人とも明日の便が取れた。
それにしても手際が悪い、一時間以上も掛かってしまう。
これから観光化が益々進むであろうのに、他人事ながら気になる。
カウンターのラオス娘の涼しい優しい笑顔がせめてもの慰めだ。



つづく