アンコールワット2
デバターの競演

8時にロビーへ降りるとカムヒヤ君が待っている。
隣にもう一人の男がニコニコしてバイクに跨っている。
「今日は彼が案内する、俺の弟だから心配ない」
「それは約束が違うじゃないか」
と出掛ったが弟君の善良そうな笑顔を見て言葉が萎む。

バイクに跨り、まず、高速道路の料金所のようなアンコールワット観覧券売り場へ。
「顔写真持ってる?」
係員が日本語で尋ねる。
「持ってない」
と言うと、
「じゃ、そこで写真撮って」
意外に素早く観覧券を渡される。
三日券、40$。

真っ直ぐアンコールワットヘ。
もう、アンコールワットは人が一杯だ。
弟君手振りで、
「何時に戻る?」
と時計を示す。
弟君は英語が苦手のようだ。
時計を見ると9時前、
「12時」
弟君は怪訝そうに頷く。
そんなに永いの?と言う顔だ。


さあさあ、デバターに御目文字だ。
太陽は後から顔を出しているのを見て、
まず、右手の後ろ側から撮り出そうと中に入ると大きな仏像、
おやっと眼を見張る、いい顔をしている。
紅い布で身体を覆っていて見えなかったが、
これが何本か手を持つヴィシュヌ神像だ。



さあ、デバターだ。





一つ一つ顔が異なる、当時の女官がモデルだそうだ。



仕草、手にしている持ち物もいろいろ有る。
それぞれに何かの意味が有るのだろう。



背景の彫刻も華やかで木目細かい。



この二体、特に右側が私の最もお気に入りの像だ。
この当時、在郷で目に付く女性、日本で言う○○小町?、
は悉く召し出されたらしい。
強制的なケースも有ったであろうが、
神に捧げるのだと家族が進んで差し出したとも言われる。
一人一人、どんな素性だったのだろう、
どんな経緯だったのだろう?
想像するだけでも興味が尽きない。
泣く泣く最愛の人と別れさせられた女性も居るだろう。
嬉々と宮殿に上がったのも居るだろう。
家族の為に、生活の為に犠牲になったのも、
どの顔もそんな喜怒哀楽をひたすら内に秘めているように感じる。



歯を出して微笑む、このような像はこの後見付けられなかった。
衣装、被り物、髪型、首飾り、耳飾、腕輪、足輪、それぞれ趣がある。



胸の膨らみは皆同じようだ。

 

鋭い眼、妖艶でもある。



何か言いたい素振りだ。



私は幸せ!ってな顔、陶酔しているようでもある。
比較的厚い唇、
口の縁が心持上に持ち上がっているのは共通している。
当時の美人の口つきなのだろう。





窓との配置も絶妙だ。



こんな具合に立ち並んでいるデバター群像、
石棚を攀じ登り攀じ降りして撮りまくる。
汗が滴り落ちるのも忘れて撮りまくるがとても撮り切れない。
なんでも1000体は有るとか。

デバター群像スライドショウ

続く