残念バンコク記3

20050914

早朝、
何か夢でも見ていたのだろうか、
寝返った瞬間にグラッと来た。
天地が揺れ動く、強烈な眩暈だ。
頭を元に戻すと幾らか落ち着いた。
ゆっくりと起き上がる、歩くとフラつく。
ポルトガルに出発するのは今夜の便だ。

兎も角、娘に来てもらって病院へ駆け込む。
MRI、心電図などを診る。
一時間ほどして結果が出た。
「脳血管、脳細胞には異常は無いが血圧が高いので点滴をしましょう、一日入院してください。」

タイの皇帝に似ている如何にも温厚そうな医師が重厚に話す、勿論タイ語だ。
専任の女性通訳さん日本人らしい、
如何にも聡明な感じで的確に通訳する。
入院となると今夜の今夜のポルトガル行き延期は止むを得ない様だ。
しかし、出発前で良かった、胸を撫で下ろす。

ロビーは恰もホテルの雰囲気。



 

患者の半分は日本人と聞く、日本人駐在社員とその家族を対象にした病院らしい。
受付の女性から看護婦さんまで如何にも訓練されている感じだ。

 

病室も清潔この上ない。

部屋からパソコンを持ち込み、
早速、エアフランスのチケット変更を済ます。
取り敢えず、一週間の延期とする。
次に、ホテルの予約キャンセルだ。
パソコンもコードを差し込むだけだ。

夕方、二人の小母さんが体を拭きに来た。
看護婦も、血圧、体温を測る人、
点滴の担当の人、掃除婦、食事係・・・
食事も日本食が選択出来る。
兎も角、居心地が良い。

20050915

明け方に血圧と体温。
血圧は安定したようだ。
味噌汁付きの朝食、期待していたほどではない。
7時に先生が通訳を伴ってやって来た。
一通りの診察、
「MRI検査の結果、脳血管には全く異常はありません。
その後、どんな具合ですか?」
「頭を急に上げると少し眩暈がします。歩くとフラフラします。」
「昨日を100としたら今日はどの程度ですか?」
「50位と思います」
「食欲があれば点滴は要りません」
「ハァー」
「もう一日休まれたほうが良いですね」
「ハァー」

チケットの変更は簡単に出来たが、
YHの予約変更は手間取る。
ポルトガルの二系列のYHに予約したので、
変更、再予約がややこしい。
メールをやり取りしている内に、あるYHの女性が女気?を出してくれた。
「私に任せなさい、それよりも早く病気を治しなさい」
のメールを受けて安心する。

もう一つの心配事は、
こんな豪華病院での治療費の事だ。
昨日から連絡を取っているカード会社(3ヶ月間有効の旅行損害保険が付いている)、
電話の掛ける場所をやっと見つけてコンタクト出来た。
対応する言葉は優しいが甘くは無い。
もっとも保険の知識が乏しく、
どのようなケースが補償の対象になるのか全く判らないのだ。
通訳さんの協力を得て、補償請求に必要な書類等の理解はした。


20050916

脳神経外科専門医の診察を受ける。
まだ30代? イケメンなお医者さんだ。
目の前に指をかざして近く遠く、左右に、その指先を追う。
目に電灯の光を射し込む。
腕、膝を小さな光ったトンカチで打つ。
検診器を胸、首辺りに当てる。
直線上を歩いてみる。
「MRIも心電図も血液検査も異常ありません。
ま、もう一日くらい休んで行って下さい」
「9月21日にポルトガル旅行に出発したいのですが?」
「大丈夫、大丈夫、問題ありません」



もう一人の先生は退院したければ退院してもよろしい、
のニュアンスだったが、
余りの居心地の良さに居座ることとする。
ホテルに戻っても無味乾燥、
ここでは上げ膳据え膳だ。
入院費用も保険で賄えそうだし・・

TVでサッカー、
大久保が動き回っているが得点に絡めない。
大久保のチームが負けた。

結局、もう一日入院延長して五日目に退院する。
「急に動かないこと、急に頭を動かさないこと、
旅行出発の前日にもう一度診察に来て下さい」

つづく