カオサン

秋の昆明からフライパンの上なようなカオサンに着く。
カオサンは昼間から喧騒と混沌。
東南アジアの旅行好きなら誰でも知っている此処は、
世界中の旅行者が集まってくる人種の坩堝ともいわれている。
真っ黒な肌から真っ白な肌、まるで写真の階調のようだ、
髪の色も色彩標本にしたいくらい種々雑多だ。

2、30m程の車道の両側は車、客待ちのタクシー、トクトク(バイクタクシー)がつながり、
車道の両側はカフェ、土産物屋、安宿、衣服屋、旅行社などが立ち並ぶ。
歩道はカフェのテーブル、露店で人がやっと一人通れるくらいの隙間しかない。
去年来たときは車道も人で溢れていたが、今はオフシーズン、それまでの事ではない。



そんな車道の真ん中を、重い荷物を転がして宿を探す。
もう此処は三回目なので大体の目処はたっているのに中々宿が見つからない。
道端のタイ人に何回か尋ねていると、
「宿を捜しているんですか?」
と声が掛かる、茶髪の若い女の子が黒い目をクリクリさせている。
「確かこの辺だと思うんだけど見つからないんよ」
「宿の名前は?」
「0000」
「聞いた事無いですねー、幾らくらいの宿ですか?」
「500バーツ位」
「ヘェー、随分高級なトコなんですねー」

一緒に、少し探してくれたが見当たらない。
「大体見当がついているから....」
と別れる。
ふっと見上げると、目の前の路地に目当ての宿の小さな看板。

10畳位の正方形の部屋の一角がトイレ、シャワー、あとはベッドとTV、
たったこれだけでこの辺では最高に近い高級宿なのだ。
それでも、シャワーを捻ると暑すぎるくらいのお湯が迸る。
値段は430バーツ、日本円で1300円くらいか。

少しサッパリして、小さなロビーの国際電話専用カウンター、
先客は若いドイツの女の子、電話が繋がると機関銃のように話す。
よくTVで見るボタンをいかに早く押すかのゲームのように、あっと言う間に受話器を置く。
電話係りのお兄ちゃん、精悍な顔付き、耳にピアス、無愛想だが手際よく処理してくれる。

ロビーから中庭に出る、10程のテーブルの一つに腰を下ろしてビール。
つと、さっきの電話係りのお兄ちゃんが隣の席に腰を下ろしてニッコリする、意外に可愛い。
「ビールどう?」
と誘うと椅子を近づけた。
暫く世間話、日本への興味が大いに有るらしい。
そのうちに彼は私の時計を覗き込んで、
「時計を交換しよう」
と言いだした。
私の時計は成田でマイルドセブンを3ケース買ったときのおまけの代物、その旨を話すと、
「それでもいいよ」
と交換。







中庭の反対側にパソコンが5台並んでいる、
「日本語でメール出来ます」
のビラも張って有る。

NIFTYをクリックしてみる、案の定、仲仲繋がらない。
係りの青年がいろいろいじってくれる。
「NIFTYは日本だけのもの、hotmailは世界中のもの、メールならhotmailの方がいいよ」
とサジェスチョンしてくれた。

それでも、色々いじっているうちにだんだん繋がるようになる。
やっと一つメールが成功すると青年が、
「やった!!」
と肩を叩く。
幾つかメールを打ってから、試しにフォーラムをクリックしてみると、
これが意外に直ぐ開かれる。
コンピューターも慣れるらしい。
その後、コメントを付けるときに3回くらい繰り返さないと成功しない事があるが、
まあ何とかコメントも付けられるようになる。
値段はすこぶる安い、1分1バーツ、1時間200円位だ。



つづく