夜のカオサン通り。

どのカフェも人で溢れ、テーブルが車道まではみ出す。
その車道の両側には焼鳥、果物、ハンバーガー、ヤキソバ、卵焼き、等々の露店が立ち並ぶ、
何かおかしげ?と良く見ると、イナゴとサソリの佃煮のようなもの。

上半身裸で身体中刺青の男が串焼きを貪り食べながら闊歩、
連れの女ももろ肌に色鮮やかな刺青。
大体がTシャツに半ズボン姿、女性は殆どタンクトップか背中丸だし姿が多い。
坊主頭、変形刈、アフリカ風に細かく編んだ髪、おっと、女性の坊主頭もいるぞ。
向こうから顎髭に何か飾りをぶら提げた男がやってきた。

カフェから、ビートの効いた音楽がこれ以上無い位の高いボリュームで通りにコダマする。
幾つもあるカフェのそれぞれからこの音がが響き渡るのだが、不思議と不調和感はない。
更にけたたましい爆音をあげるバイク、トクトク、そして、お喋り、嬌声、怒声、それと光だ。
ラスベガスなどとはほど遠いいネオンや照明だから、陰の部分が多い。
その陰が重要な役割をしている、光と影、それが程よいスピードで動く。
時折、大粒の雨が猛烈な勢いで舗道を叩き付け、7色の色彩を伴って散りばめる。
音と光と影、それと時間が混然としながら独特なカオサンの雰囲気を醸し出す。

勿論、これ以上の真面目はないといった風の、
身なり、顔つき、目つきの若者達もうろついている。
白人、日本人、女性も、男性も。
彼らが好奇心一杯のまなこを見開いて恐る恐る歩く姿が微笑ましい。
約半分はこの種の若者達だ。

白人男と手を繋いだ日本人の女の子と目が合う、一瞬、彼女の視線が止まる、
「あれ! 親父?」
父親の面影が脳裏をかすめたのだろうか?

カオサンに来ると必ず寄るラーメン屋。



二階が日本座敷のようになっているのが嬉しい。
隣のテーブルには日本人の若者が3人足を投げ出している。
その一人は刺青、去年は余り見掛けなかったように思う日本人の刺青姿、
それも女性に多くなった。

日本人の女の子が一人入って来て、私のテーブルに向き合って座る、
何処かで見たことがある、と、
「宿、見つかりました?」
この間の女の子だ。



しばらく旅の情報交換、彼女はもう3ヶ月此処でブラブラしている。
話してみると同郷人。
「一寸、聞いてもらいたい事が有るんですけど?」
「何?」
「私、あと15日ヴィザが有るんです、その間バイトしようと思ってるんです。
でも、それが麻雀屋なんです。 
時間は夕方4時から12時まで、一番遊びたい時間帯なんです」
風邪を引いたらしく頻りに咳をする。
「麻雀屋かぁー」
昔の、或る麻雀屋がらみの悪い想い出が浮かび上がる。
「止めた方がいいと思うよ」
「そうですか」
「麻雀屋にも善いのと悪いのが有るけど、悪いのはトコトン悪いよ。
此処では良く判らないし」


宿の戻ってメール、時々5台のパソコンは取り合いになるが回転は速い。
大抵の若者はパチパチと打ち込んでアッと言う間に引き上げる。

つづく