アンコールワット記7
Ta Prohm
此処は多少の予備知識がある。
と言っても、
発見された当時の破壊されたままの姿で保存されている、の程度だ。
西門の内部にそれを思わせる巨大な樹木が立ち並んでいる
デバターの歓迎、
右のデバター、アンコールワットのデバターより一寸生っぽい。
良く見ると緑色の苔。
中へ一歩入って、
ウオッー、思わず唸る。
第一印象、地獄。
縦横無尽に王の尊厳を荒らしまわる樹木、
スポアンと言う榕樹だそうだ。
まさに人為と自然との闘い。
1000年の年月で石さえも朽ち始めるが、
生き物は命をつなぐ。
この樹木たちは何代目だろう。
石にあけられた穴、
まさか弾痕ではあるまい、何がしかの規則性がある。
運搬用の穴だろうか。
自然のままに放置されて居るとはいえ何がしかの人為の跡が見られる。
発見当時の凄まじさを想像し身の毛がよだつ。
もっとも元々は彼等の世界だった。
壮絶な仇討ちの如しだ。
あと1000年、10000年したら自分達の世界が取り戻せるだろうか。
時間のオーダーが違うのだ。
このデバター達は1000年の成り行きを見守ってきたのだ。
敷地は広大だが僧院は比較的小さい。
ここには当時を物語る碑文が残っている。
その碑文によると、
当時、この僧院には高僧、僧侶、見習僧、
そして舞姫が615人、総勢12640人が住んでいたそうだ。
この1000年の葛藤を、一年を一秒に縮めた動画で見てみたい。
異星人との闘いの如き様相を呈するのではないだろうか。
この道も森林も周壁の内部だ。
当時は整備された庭園でも有ったのだろう。
人波について戻り掛けるがどうもおかしい。
来た道と違うようだ。
方向感覚が大分鈍ってきた。
ぐるりと廻って反対の道を進むと入れ口の四面仏が見えた。
続く
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