公州の巻2
目が覚めると直ぐ目覚まし時計が鳴り出した。
いつもそうだが、目覚ましで起こされたことは無い。
不思議と、目覚ましを掛けてるだけで違うのだ。
タクシーで公州博物館へ。
旅行中は、なるべく、タクシーは使わない主義だが....
バスの標示がハングルで判りにくいのと、時間の関係、
それと、韓国のタクシーを見直したからだ。
車内に埃一つ無い清潔さ、必ずメーターを倒す。
初乗りが何処でも1300ウオン。
韓国のタクシーは要注意とかの風聞は全く当てにならない。
開館10分前、博物館の庭に並んでいる石像に惚れ込む。
多分百済時代のものではないだろう、しかし、みんな素朴で良い顔をしている。
中に入って驚いた。
あの、手付かずで発掘された武寧王稜の遺物の数々、
素晴らしいというより凄まじい。
王、王妃の黄金の冠、耳飾、腕輪、首飾り、等の装身具、枕、靴、鏡、等々....
(以上5点はパンフレットよりの複写)
王朝の栄華とそれを培った当時の文化の高さを再認識する。
実寸大の武寧王稜の模擬墓の中に入ると、成る程、天国の気分だ。
百済の古墳の殆どが盗掘に遭っているが、
ある偶然から、武寧王と王妃の墓が、全く、無傷のまま発見され、
夥しい貴重な文物が発掘された。
墓主と埋葬時期が記された墓誌も完全な形で残されており、
内容的にも、韓国の「三国史記」と一致した。
この発見から、百済文化の全貌はもとより、
新羅、更に日本との交流の歴史に多大な情報をもたらした。
..と案内書にある。
韓国、日本の歴史学者や歴史愛好家に与えた驚愕の大きさが想像出来る。
売店で、当時を模擬した綺麗な白磁の水差しを求める。
受付の美人に大田へのバス便を尋ねと、何処かに電話する。
門まで私を連れ立って、止めたタクシーの運転手に行き先を告げる。
何処へ行っても、人々の至れり尽くせりの親切が身に沁みる。
バスの入れ口で、
「テジョン」
と言うと、運転手は頷かない。
「大田」と書いても頷かない。
「おかしいな」
と思っていると、運転手が、
「西大田」
「東大田」
と二行に書いた。
大田にも二つあるらしい。
「大田駅」
と書くと、やっと頷いてアクセルを踏んだ。
大田に入ってらしい。
来る時は大田駅の真ん前からバスに乗ったので、
駅の付近しか見ていなかったせいか、
喧騒と雑踏の都会の印象で有ったが、
バスから見渡すと、整然と整備された道路、町並み、
まさに、近代都市の様相を呈している。
多分、駅の付近は旧市街、今通っているのは新市街だろう。
広い道路沿いの並木の緑が清清しい。
後で知ったのだが、大田は第二の首都として、官公庁の移転、
工場団地の造成が頻りらしい。
一番最後に降りた私に、
「タクシー、タクシー」
と声を掛けてくれた。
「あとは、タクシーで行きな」
のようだ。
大田駅でソウル行きの切符を買う。
一番早くソウルへ着く列車、と言ったつもりが、
通じたのか通じないのか、買った切符は二時間後の発車だ。
行き掛けにお世話になったインフォーメーションを覗いてみる。
「如何でしたか?」
「最高でした」
ホームステイの事は言いそびれた。
「切符は買いましたか?」
「ハイ」
と切符を見せると彼女は不満顔だ。
「自分で、この列車を希望したのですか?」
「いえ、ソウルと言ったらこの切符を呉れました」
「それはおかしいです」
と言って、彼女は切符売り場に乗り込んで行く。
売り場の男となにやら掛け合って、戻ってきた。
「切符を換えてもらいました、ソマウル号、10分後に発車です」
お礼もそこそこにホームへ急ぐ。
有り難い、これで明るいうちにソウルへ入れる。
つづく
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