ソウルの巻3
光化門を出て暫く行くと仁寺洞、大小の骨董品屋が並ぶ。
どの店も格調高い。
一つのショウウィンドウで、鮮やかな紫青色の水差しに見とれる。
蛙のデザインだ。
中に入って値段交渉、100000ウオンを一歩も負けてくれない。
旅先で記念に求めるのが通例になっている篆刻印もズラリある。
仮名用に小さな物を二つ選んだが、
こちらも二文字入りが一つ50000ウオン、と一切取り合わない。
中国では、値段交渉、値引きが一般常識だが...
そうしないと、中国の友人に貶されるのだ。
博物館、美術館はもとより、百貨店でもそうだ。
もっとも、
日本でも、デパートで値引きを成立させる強者の友人が居る。
韓国では常識が異なるようだ。
Kさんとの約束の6時も迫っている。
いったん、引き上げることにする。
「じゃあ、また」
と店を出ようとする私に、店の主人は、
「ああ、そう」
と言う風にニコリしてそっぽを向く。
6時前にKさんがニコニコとやって来た。
直ぐに、近くの日本料理店に案内される。
木目の美しい木をふんだんに使ったシックな店。
丁度、日本の刺身が恋しくなるのを見透かされたようだ。
平目、鯛、鮪....
ズラリとテーブルに並ぶ。
「焼津、沼津の刺身とは、一寸な」
Kさんが笑うが、どうしてどうして、結構な味だ。
早速、今日の戦果を報告する。
一つ一つに、
「それは良かった、それは良かった」
と頷いて下さる。
話題豊富なKさんのお話に引きずれ込まれる。
時にはエロ話までに発展する。
従軍慰安婦の話になる。
「日本人の従軍慰安婦も居たのでは?」
と問うと、
「韓国人の場合は一寸違う。
軍属として募集されたのは、おぼこな17,8才の女学生、
彼女たちが配属されたのは、名前尤もらしいところだが、
実のところは従軍慰安婦だったのだ」
Kさんの目が潤む。
この話には参った。
日本の湯飲みのような器に、日本酒を並々と注ぐ。
下の方に小穴が直角に四つ開いている。
始めて見る器だ。
Kさんが交渉してくれ、お土産に戴いて来た。
つづく
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