ハノイ記6

朝、窓の外を眺める。
壁に、[1920] と彫り込んである。

 

1920年に建てた家なのだろう。
そんな旧市街だ。

向かいの家の屋上で女の子が洗濯物を干している。
ものの10mも無い道を挟んだ向こうだ。
目が合った。
笑顔が可憐だ。
手まねで、「十三?」
と示すと、首を横に振る。
「十二?」「十一?」「十四?」
全て首を横に振って、
「十五」
と指を広げた。

今日は一日ホテルでゴロゴロする事に決め込む。
ロビーに降りてマネージャー君に相談する。

マイチャウ、
もう一つ楽しみにしていたこのベトナム北部の少数民族を探訪するツアー、
これも、道路が不通で中止になってしまった。
写真を見せてもらうと、成る程、切り立った山の中腹をえぐる様な道だ。
一日休んで、マネージャー君お勧めのタイコックへ行く事にする。

日本人の女の子が顔を出した。
彼女はハノイに留学中、ベトナム語の勉強に来ている。
同級生はベトナム駐在員の奥さん方が多いそうだ。
ここのマネージャー君に日本語を教えているとか、
マネージャー君は、日本語を勉強し始めて4週間とか、
カタコトではあるが、大体、意味は通じる。

前のお嬢さん、今度は子守だ。
妹だろうか、しきりに幼女をあやす。
と思っている内に屋上、三階、二階と掃除をしだした。
良く働く。

次に顔を出すと今度は料理をして入るらしい。
かと思うと洗濯物を取り込んでいる。



日本の15歳の女の子はどうだろう。
殆ど止まっているjことが無い。
遊んでいるのは猫を天に向かって差し伸べている時くらいだ。
将来、どんな女になるのだろうか、
なんて無用な想像をしてしまう。

夕方、ホテルの前のインターネットカフェを覗くと、
その女の子が店番だ。



肝心のインターネットの方は嫌に時間がかかり日本語の書き込みが出来ない。

部屋に戻ってビールを飲んでいるとマネージャー君から電話、
「ビールを飲みに行きませんか?」
二つ返事でOKだ。

彼の運転するバイクの後ろに跨って人並み、バイクの群れの中をうねる。
着いたのは、覗いてみたかったベトナムの大衆酒場だ。
hanoi bear が美味しい、生ビールだ。
値段は4000ドン、日本円で40円くらい。

 

彼は26歳、
「恋人は?」
「今居ない、二年前に日本人の恋人居たけど別れた。 それと、とても忙しくて.....」
朝7時から夜10時まで働く、昼間、時間をみて日本語学校へ行く。
おっとりしているが仕事は素早い。

経済を専攻し英語は堪能、フランス語も話すそうだ。
今は日本語の勉強に熱中している。
「今日は日本語学校へ行って来ました」
「今日習ったのは、....いん....です」
仲々判らなかったが彼が例を示してくれた。
「.これはとっても美味しいんです」

将来、アメリカ、フランス、日本へ行って勉強してから自分の旅行社を持つのだそうだ。
毎日ぶらっと顔を出す私への対応も、甘えも衒いもなく極めてリーゾナブル、好感が持てる。
只、ビール好きで、一晩で7杯から9杯は飲むそうだ。
今度はベトナムの刺身を喰いに行く約束をした。
川魚だそうだ、楽しみが増えた。

帰り掛けにハノイ市内を一周してくれる。
若者達のバイクの群れに入る。
かなりのスピードだ。
半分くらいは女性ドライバー、大体が長い茶髪を颯爽と風に靡かせている。
バイクに跨るほっそりとした体の線がバイク姿に良く似合う。
キャップを被ってい者は殆ど居ない。
日本車は20万円、最近中国から6万円前後の物が入ってくる。


つづく

 

ハノイ記1ハノイ記2ハノイ記3ハノイ記4ハノイ記5ハノイ記6ハノイ記7ハノイ記8ハノイ記9