ハノイ記8

口の周りに腫れ物が出来た。
ハロン湾で馴れないカニャック漕ぎや泳いだりしてせいだろう。
その前の炎天下での道迷いのせいかも知れない。
いずれにしても、間違いなく体力は落ちている。

終日、ゴロゴロして夕方ホワンキエム公園のレストランでビールを飲む。
客が多い。
ベトナムのお嬢さん達、一様に贅肉がない。
従順そうで優しそうで何処かに奥底の強さを垣間見る。
キメ細かい艶の皮膚、きりりとした目付き、
そこはかと知性も漂わせている。

 



そう言えば、アオザイの女の子を見掛けない。
出発前、娘に、
「日本からの写真好きの観光客がアオザイ姿を撮ろうと
大学の門の前に屯していて不評を買っている。
みっともない事しないでね」
と念を押されている。

帽子を深く被った学生風の女の子が客の周りをウロウロしている。
靴磨きだ。
後ろの席のアメリカ人が5000ドンに負けさせている。
前を通った時、ズック靴でも良いかと靴を示すと、
OKの合図。
1$奮発してしまった。

部屋に戻って窓を開くと前の女の子が洗濯物を取り込んでいる。
全く良く働く。
学校へは行ってないようだ。

TVで映画が放映されている。
面白いのは、一人の女性が全ての出場人物の吹き替えをしている。
キッスシーンなど、男女とも女の声、しかも翻訳調でいただけない。

ベトナム名物の木彫りのハンコの事を思い出した。
地図を見るとつい目と鼻の先、
行ってみると、間口一軒ほどの店で小母さんがカタコトの日本語で歓迎する。



小父さんは一心不乱にハンコを彫っている。
何冊かサンプル帳をのぞくと日本文字が多い。
書の落款にはなりそうも無いが記念に注文する。
悪い癖で、3個15$を10$に負けさせた。

マネージャー君から電話、
「犬の肉を食べに行きませんか」
流石に、今日は遠慮した。

翌日、
最後のハノイ。
バスでハノイを巡る。
マネージャーに書いて貰った、
「ここで降ろして下さい」
のメモを運ちゃんに示すと親切に教えてくれる。

しかし、降りた処が何処だか良く判らないので地図も使えない。
感を頼りに歩くと文廟の前へ出た。

 

 

文廟だから孔子を祀ってあるのだが、
此処にも、かって、中国から受けた影響の強さが覗える。
科挙合格者の石碑がずらりと並ぶ。

ベンチで一服していると、
隣に居た三人の女の子が英語で話し掛けてきた。
如何にも純真そうな可愛い女の子達だ。
高校生位に見えたが、
ハノイ大学の英文科の学生だそうだ。
「何処から来たの」
「ベトナムは初めて」
「何故ベトナムへ来たの」
「ベトナムは何処へ行ったの」
「ハノイは何処へ行ったの」



拙い私の英語では話が途切れがちになるが、
懸命に話を継いで来る。
「奥さんは」
「何故、一人出来たの」
「他の外国は何処へ行ったことあるの」
取り止めなく続く。
写真を送ってやる事にした。
(メールアドレスに間違いが有ったらしくメールが送れない)

ホーチミン廟へ向かって歩いていると通りから声が掛かった。
さっきの女子大生が自転車から白い歯を出し手を振って通り去った。

ホーチミン廟、立派の一言。

 

一柱寺、蓮に見立てて一本の柱の上に蓮の花が開いたように祠が有る。

 

つづく

 

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